第59回免疫学セミナー
2013年12月17日
【演題】アレルギーならびに生体防御における好塩基球の新たな役割
~ 好塩基球は小粒でもぴりりと辛い ~
【講師】烏山 一 博士
【所属】東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科
免疫アレルギー学分野・教授
【日時】平成26年1月30日(木)午後16:30-18:00
【場所】健康医科学イノベーション棟8階講堂
【講演要旨】
好塩基球は顆粒球の一種で、1879年にPaul Ehrlichによって初めてその存在が記載されたが、その後長い間、生体内での役割・存在意義に関してほとんど解明が進んでいなかった。好塩基球は、末梢血白血球のわずか0.5%を占めるに過ぎない極少血球細胞集団であり、また高親和性IgE受容体Fc?RIの発現やヒスタミンを含むケミカル・メディエーターの分泌などマスト細胞(肥満細胞)との類似点が多いことから、マスト細胞のバックアップ的存在あるいは前駆細胞と見なされ、マスト細胞に比べ極めて影の薄い存在であった。一方、解剖学的観点からすると、マスト細胞が末梢組織中に定住しているのに対し、好塩基球は末梢血中を循環するといった局在の違いは明らかで、好塩基球が生体内でマスト細胞とは異なるユニークな役割を担っている可能性が示唆されていた。事実、この数年の間に立て続けに、生体内におけるアレルギー反応や免疫制御において好塩基球が極めて重要な役割を果たしていることが報告されて、これまで日陰者扱いされていた好塩基球が、にわかに注目を集めるようになった。本講義では、私たちが最近見いだした、好塩基球による「慢性アレルギー炎症の誘導と制御」と「寄生虫感染防御」を中心にして、生体内における好塩基球のユニークな役割について発表し、好塩基球を標的としたアレルギー治療ならびに寄生虫ワクチン開発の可能性について討議したい。
参考文献
Obata-Ninomiya et al.: The skin is an important bulwark of acquired immunity against intestinal helminths. J. Exp. Med. 210: 2583-2595, 2013. Egawa et al.: Inflammatory monocytes recruited to allergic skin acquire an anti-inflammatory M2 phenotype via basophil-derived interleukin-4. Immunity 38:570-580, 2013. Karasuyama et al.: Nonredundant roles of basophils in immunity. Annu. Rev. Immunol. 29: 45-69, 2011.
セミナーは日本語で行われます
This seminar will be held in Japanese
seminar59.PDF
問い合わせ先: 医学医療系・免疫学 渋谷彰(ashibuya@md.tsukuba.ac.jp)
たくさんのご来場お待ちしております。